そこでは、初老の男性アナウンサーが現在の状況を、淡々と伝えていた。


「正体不明の病原菌のため、政府は隔離地域には全く近づけない模様です。その無策ぶりを、世論は批判的に捉えております。」

「なに!?」

土門は思わず声を上げた。


政府は、多くの怪我人がいるということがわかっているというのに、「何かあったら困る」という理由で、何もしようとしないのか。

確かに病原菌が広まったとしたら、現政権にとって大きな痛手となるかもしれない。


しかし、だからどうなのだ。