「ううん。テツオが入れないのに、私だけが入るわけにはいかないから。」

「そうか。」

きっぱりとした亜季の言葉に、伯父はそれ以上何も言わなかった。


亜季は伯父に見送られながら、廊下にでて店へ降りようとしたとき気がついた。

店へと続く床には、履きっぱなしのぼろぼろの白いサンダルと並んで、真っ白なスニーカーが置いてある。


「伯父さん、これ…。」

「サンダルでは走りづらいじゃろう。亜季が寝ている間に買っておいた。」

伯父の余りの優しさに、亜季は今にも泣き出しそうになった。


「ありがとう、何から何まで…。」

消え入るような声で、亜季は途切れ途切れにそう感謝の言葉を言った。


そんな姪に、伯父は穏やかな表情で小さく首を振る。