亜季は脱力したまま、ぼんやりと空を見上げた。


頭上には夏の澄み渡った空が広がり、その中を白い雲がゆっくりと流れていく。

その様子は、亜季がこれまで生きてきた田舎の空とも、東京で見た空とも、なんら変わりがない。


亜季は疲れきったように投げやりな視線を落とすと、夏の熱い風に揺れる緑の夏草をじっと見つめる。


「ここにずっといたのか。」

突然のその声に、亜季は驚いて振り向いた。


そこには、心配そうな顔をしているテツオが立っていた。


「来てくれたんだ。」

亜季は正直、テツオはもう来ないんじゃないかと心配していた。


よかった。


そんな亜季に向かって、テツオはにっこり笑うと、たくましい左腕を振り上げた。