そう言い残すと、テツオは歩を早め、林の奥へと走っていった。


亜季はその後姿を何も言えずに見送った。

そして頭を抱えてうずくまり、声にならない叫びを上げた。


テツオと自分を隔てたこの金網をあんなにも憎んでた自分。

なのに、テツオにほかの人を隔離するように強要してしまった。


バカだ。

やっぱりバカだ。


こんな自分が、東京に出るだけで変われると信じていたことが、この上もなく恥ずかしい。


誰もいなくなった金網の前。

亜季は一人、わずかに顔を出した弱弱しい朝の光に照らされていた。