「どうしたの?おいしくなかった?」

「いや、すごいおいしかった。」

「じゃあ、どうして…?」

心配そうにそう尋ねる亜季に向かって、テツオはにっこりと笑って答えた。



「こんなうまいもの、一生懸命頑張ってる尾上にも食べさせてやらなきゃ。」

「駄目!」

張り裂けそうな亜季の叫びに、テツオは驚いて言った。


「どうしてだい。」

「だって…。病人が一杯いるところに行ったら、テツオも感染しちゃうかもしれないし…。」

亜季の言葉に、テツオは一瞬歩き始めた足を止めて微笑むと、ぽつりと言った。


「いいんだ。俺には彼らを隔離できない。」