アイビーは私を放さない

お花屋さんが見えてくると、沈んでいた心がほんの少し救われた気持ちになる。店頭に並んだ色とりどりの花が、いつも私を癒してくれる。

「エリックさん、バーバラさん、こんにちは!」

花の手入れをしているグリーン夫妻に声をかけると、二人が顔を上げてニコリと笑う。

「美月、こんにちは」

「今日もよろしくね〜」

二人のバース性は聞いたことないけど、多分ベータだろう。二人ともこんな私にも優しくて、仕事をテキパキとこなして、私は二人を尊敬してる。

「はい。今日も頑張ります!」

荷物をお花屋さんの奥に置いた後、エプロンをつけて店頭に立つ。甘いいい香りが鼻腔に入り込んだ。うん、心が穏やかになっていく。お花に囲まれていると幸せだ。

お花の水替えをしたり、土や鉢などを運んだり、お花屋さんに来たお客様におすすめの花を教えたり……。いつも通りお花屋さんは忙しい。

「ありがとうございました!」

頭を下げて花束を買ったお客様を見送る。ピンクの可愛らしいチューリップの花束はきっと恋人へのプレゼントだろう。