「付き合って下さい」
人生で初めて口にした言葉


遡ること一年前
俺はまだ高校一年生の頃
その頃は人など興味なく、何もかもに嫌味を感じていた
「おーい」
こいつは、幼稚園からの幼馴染、翔
翔とは、唯一気軽に話したりしていた
幼馴染だからか俺の思っていることは大体わかるようでちょっと不気味…
「あーあつまんねー」
そう独り言を呟く
「おい、ダメでしょ!」
翔は元気がいっぱいでうるさい
でもクラスのムードメーカーだ
それに俺は顔立ちが良いからかいつも女が寄り添って来て気持ち悪い
そう言うのが嫌いな俺はいつも無視していた
「ねえねえ瀬那くん〜!」
うるさい
その喋り方、ぶりっ子かよ
そんな毎日を送っていたある日
いつものように家に帰ろうとすると1人の女とおばあちゃんが倒れていた
その女はとても美人だった
今まで俺の周りをうろついてくる女とは違って、
そしておばあちゃんを助けようとしているように見えた
それでもあんな小さな体では1人では到底無理なようで辺りをキョロキョロとしていた
そして俺の存在に気づき駆け寄ってきた
その姿は可愛く、俺の頭の中は「可愛い」に埋め尽くされた
こんな気持ちは初めてだ
「ねぇ、……ねえって!」
呼ばれていることに気づき「何?」と返事をした
「あそこでおばあちゃんが倒れているの!
一緒に助けるの手伝ってくれない?」
その声はとても透き通っていて綺麗だった
「あ、うん」
その後2人であのおばあちゃんを助け、病院に送られた
「はぁ…疲れた」
疲れたように息を吐いた
「あ、ねえ君!
お名前は?」
「瀬那」
「瀬那くん、一緒に手伝ってくれてありがとう!」
そう言って笑顔を見せた
俺はその瞬間恋をしたんだ
「お前は?」
「私?名前は水瓶美愛、中学3年生!」
中3?
年下だ
「瀬那君は何年生?」
「高一」
急に青ざめた美愛
何が起こったんだ
「年上…?
私、敬語じゃなかった…
ごめんなさい!同じだと思って、敬語外してました…」
そんなこと?
「いいよ、敬語使わなくても」
そう言うとまた笑顔になった美愛
可愛い、
「ありがとう!
じゃあまた会う時が会ったら!」
「うん、バイバイ」
そうして俺の恋は始まったんだ
それから俺は努力した
優しくなって美愛に好かれるように頑張った
一年が過ぎた時、入学式に美愛がいたんだ
俺は心の底から喜んだ
その日は眠れなかったくらい
もう会えないと思っていたから

そして今に至る
今、告白の返事を待っている途中
無理だったらどうしよう
まぁ無理だろうな、こんな俺が、接点のない俺が
絶望した瞬間
「……はい!」
え、今はいって言った?
聞き間違い?
でもちゃんと聞いた
「はい」って
「え?
付き合ってくれるの?」
「うん」
照れたように言った美愛
やった!
恋が実るっていいもんだな
「よろしくね『瀬那』!」
瀬那、初めて呼び捨てで呼ばれた
「瀬那って一年前くらいに一緒に助けたよね」
「覚えてくれたの?」
「うん!」
そう言って笑った笑顔は俺が恋した笑顔と全く重なった