「うち、米がないんですよ」
「私のこの荷物を見てください(笑)」
結羽は保冷バッグを見せた。
「マジで?結羽先生のメシ食えんの?」
「はい、お鍋はありますか?」
「ラーメンを作る片手鍋はあります」
「十分です(笑)」
優はオートロックの鍵を開けて結羽を入れた。
12階の部屋の鍵を開けてどうぞと招く。
「お邪魔します」
「信じないかもしれませんが、この部屋に入った初女性です(笑)」
「嘘ですよね?」
「本当ですよ、今までの彼女とか家は教えてないので…」
結羽はじーっと優を見た。
「信じてくださいよ(笑)」
「だって…じょう先生はモテるから」
「モテるからって長く続かないから」
優はキッチンに買ってきたものを置いた。
「コンビニに行っても同じものばかり買ってしまいます」
「普段の食事もコンビニなんですか?」
「1番多いのは大学近くの居酒屋ですね」
「居酒屋ですか、じゃあそこでお酒も?」
「はい、大学のある日は大抵行ってます、誰かしら友達がいるので」
「へぇ、卓とかも知ってるのかな」
「いや、卓は来たことないって言ってました、家と反対方向だからでしょうね」
「そっか…まあ卓も料理するからあまり外食はしないでしょうね」
結羽はエプロンをつけてお粥を作り始める。
「熱は?」
「風邪薬飲んだので今は下がってるはずです、体温計がないので自分の感覚ですけど」
「そう…」
結羽は手をハンドタオルで拭くと優のおでこに手を当てた。
「でもまだ少し熱いようですよ、お粥食べたら…ちょ、ちょっとじょう先生?」
おでこに当てた優の頭が段々近づいてくる。
「じょう先生!」
「はっ、危なっ、結羽先生に引き寄せられました」
「近づいたのはすみませんけど、熱を計るために触っただけですよ」
「すみません、ソファで大人しくしてます」
優はソファで膝をかかえて座って待っていた。



