「ほんとに助かった!ありがとー!」
「どういたしまして」
SHRを挟んで、分からないと言う問いを里央に詳しく解説する。
隣には里央の友達2人もいたけど、気にせず纏めて説明してあげた。
余計な揉め事は起こしたくないから、人畜無害なクラスメイトを演じる。
里央とは入学して最初の席替えで隣になって仲良くなった。
仲良く、といっても私たちは常日頃からつるんでいるような関係ではない。
里央には他にも一緒にいる友達がいたし、何より彼女のサバサバとした性格が生み出すこの距離感が私には心地よかった。
と、1限目の開始のチャイムが鳴る―――。
音を立て扉が開き、少し怠そうな様子で教室に入ってきた新人教師の男を見つめる。
教壇に立つ男が顔を上げ教室内を見据えた瞬間、その瞳が最後列に座る私を捉えた。
ぱちり。音が鳴ったようにぶつかる、視線。
私と男の間に、ヒヤリ、冷たい空気が流れたのを知る人間はここにはいないだろう。

