Honey Trap




今日はやけに冷え込むな、とブレザーの襟元をかき合わせながら朝の忙しない人混みの中を、私も例に漏れず歩く。


冬の朝は、空気に反射した太陽の光がキラキラと眩しいから苦手。

それが寒空にくすんだ街並みを、一瞬で鮮やかに映し出してしまうから。


私は、似つかわしくないと思う。



「おはよー、美千香」

「おはよう。清水さん」


人の流れに流されるように学校に辿り着いた私は、自然と人前での顔を繕うと教室の扉を開ける。

何人かのクラスメイトに声をかけられ、挨拶を交わす。


「おはよう」

「美千香、数学の課題あとで教えてくれない?」

「あぁ、あれね。いいよ」


その中の1人、里央(りお)のお願いに快く笑顔で答える。


もうすぐ後期の中間試験が迫っている。

授業のスピードも速くなってきているから、ついていくのも大変でみんな焦っている。