Honey Trap




思考を遮断するようにイヤホンを耳に突っ込むと、テキストを広げ課題に取りかかる。


まあまあの進学校に通う私は、毎日の課題と予習復習に余念がない。

周りがあくせくする中、私はそれを卒なくこなす。


トップレベルとはいかなくても、それなりの進学校。

馬鹿はいないだろうと思っていたけど、どこへ行っても高校生なんて似たり寄ったりの連中ばかり。


男子なんて騒ぐしか脳がないのか、と疑うような低レベルの会話しかしていない。

女子ときたら更に質が悪い。

流行りに流され、色恋に現を抜かし、根も葉もない噂話。


少しは学生の本分を弁えろ、と言いたい。


まぁ、私も人のことを言えた義理ではないけれど。



―――ちょうど課題を終えた頃、玄関の扉を開ける気配がした。


時刻はまだ9時前。

今日は比較的早かったな、と思いながら課題を片づける。


少しして階段を上がる足音に廊下へ出ると、仕事から帰ったばかりのママがいた。