氷河ちゃんは面倒くさがり

その間に、月宮先輩はがっくりと落ち込む様に肩を落とし、兎亜と天音先輩はやれやれ、と溜め息を吐いていたことなんて知る由もなかった。



「それにしても、甘露さん?氷河ちゃんが出るのはバレーだけだと聞いていたけど?」

「ご、ごめんなさい。あたしが無理を言って咲紀ちゃんに‥」

「‥先輩。全ては私がした事で私の責任です。
兎亜を責めないでください」

「祐希。甘露を責めるな。殺すぞ?」




私に向けられていた嫌という程甘ったるい視線が一転し、兎亜にこれでもかという程冷たい視線を向けた月宮先輩。


兎亜を責めるのは違うし、何より許せない。

例え先輩であっても。


 そう思って反論する。


なのに兎亜はそんな理不尽な事を言われても、ぺこぺこ頭を下げ続け、終いには私を止めようとしている。

なんていい子なの。


兎亜大好きな天音先輩も、瞳に怒りを滲ませて殺す、とまで言った。

いつも穏やかな天音先輩からそんな物騒な言葉を聞いたのは今日が初めてだった。



「すみません。月宮先輩、本当にすみません」

「兎亜。こんな人に謝らなくていいから。
確かに兎亜が私の種目を増やしたけど、結果的に出ると決めたのは私。
兎亜が負い目を感じる必要なんて全くないの」


 頭を下げ続ける兎亜の華奢な肩をがしっと掴んで、前を向かせる。