氷河ちゃんは面倒くさがり

必死に何度も謝る兎亜に、大丈夫、とこれまた何度も伝える。本当に大丈夫なんだ。

多少痛くても平気だし、この程度なら全然他の種目にも出れる。




だけど、最後に兎亜がぼそっと呟いた言葉だけは、どうにも聞き取れなかった。


「兎亜?さっき、なんて言ったの?」

「え、ううん!気にしないで!それよりほら、消毒消毒!」


兎亜が何か隠している事はすぐ分かった。
でも、聞かれたくない事ならば無理に聞き出したりはしない。


大人しく手のひらを差し出して消毒されていると、バタバタとこっちに向かってくる大きな足音が聞こえた。


「咲紀ちゃん!?大丈夫!?」

「はい。大丈夫ですよ、月宮先輩。
あと、咲紀って呼ばないでください。次言ったら生徒会辞めますから」



なぜか心配してくれる月宮先輩。珍しい。

この人が人の心配をするなんて。むしろ、笑われてからかわれると思っていた。


だけど“咲紀”呼びは流石に嫌で、思った以上に冷たい声で言ってしまった。

けど、最後に言った生徒会辞める、は別に嘘ではない。辞めたいし、その口実ができてなんなら怪我をしてラッキー!なんて思えてくる。


それを兎亜に言ったら怒られるから、顔にも声にも出さないけど。


「氷河。流石にやめてやれ。祐希が氷河と会える貴重な機会を無くす事になる」

「はぁ‥。別に私としては構いませんし、なんなら月宮先輩も大層お喜びになられるのでは?」



 そう言って、しっかり手当てされた自分の手に視線を移す。