今夜の月は眠らない。


そして、わたしはあの日の次の日から、完全に10階で和総さんと同棲を始め、猫バスではなく、和総さんの寝室にあるダブルベッドで一緒に眠るようになった。

和総さんは眠る時、決まってわたしの額にキスをしてから「おやすみ。」と言う。

そんなある日の夜、いつものように和総さんがわたしの額にキスをした時、わたしは和総さんを見上げると「和総さん。」と呼んだ。

「ん?」
「和総さん、前に大事だと思える人にしか手を出さないって、言ってましたよね?」

わたしがそう言うと、和総さんはハハッと笑い、「うん、言ったね。」と言った。

「わたし、まだ手出されてないんですけど。大事じゃないんですか?」
「そんなわけないよ。でもね、エレナと一緒に居て、思わされたことがある。大事過ぎると、なかなか手を出せないって。」

和総さんはそう言うと、わたしを真っ直ぐに見つめた。

「いいの?今夜、眠れないよ?」
「うん、眠れなくていい。」

そのわたしの言葉をきっかけに、わたしたちは唇を重ね合い、長い夜が始まった。

和総さんがすること一つ一つに優しさを感じる。

わたしのコンプレックスである胸も、最初は見せることに抵抗があったが、和総さんは「可愛いよ。」と言ってキスをしてくれた。

和総さんと一つなったときも、今までに感じたことのない幸せと愛情を感じ、自然と身体がのけ反った。

今夜は満月だ。

太陽に照らされ、月は輝ける。

今夜の月は、眠れない、、、いや、眠らない。




―END―