今夜の月は眠らない。


男性は、目を赤くして涙を拭うと、「ちょっと待ってね。飲み物出すから。」と言い、キッチンに向かった。

そして、その男性が持って来てくれたのは、飲む前から良い香りがする葡萄ジュースだった。

「どうぞ、飲んでみて?」

そう言い、差し出されたグラスをわたしは受け取ると、「いただきます。」と言い、一口飲んだ。

あれ?これ、飲んだことある、、、

「めっちゃ葡萄、、、。」

わたしの言葉に男性は笑うと、「そう言うと思ったよ。」と言った。

その瞬間、わたしの頭の中にたくさんの記憶と言葉が溢れてきた。

"22時頃、お待ちしてます。"

"水瀬さん、面白いね。"

"エレナは、太陽だよね。"

"エレナは、俺の大事な人だからね。"

お酒が弱いわたしの為に、ストックしてくれていた葡萄ジュース。

わたしがワガママを言って作ってくれた、野菜たっぷりのコンソメスープ。

眠れない時は、このソファー、、、猫バスで眠らせてもらって、フワフワの毛布を掛けてくれた、、、

「、、、和総さん。」

わたしがそう呼ぶと、目の前に居る男性、いや、和総さんは手で顔を覆い、泣いていた。

そして、「エレナ!」とわたしの名前を呼ぶと、わたしを抱き寄せ、強く抱き締めてくれた。