今夜の月は眠らない。


エレベーターが10階に着くと、ポーンと柔らかい音が鳴った。

この音、何だか毎日聞いていたような気がする。

そう思いながらエレベーターを降りると、"Motomiya"と書かれたお洒落な表札があるドアの前に辿り着いた。

もとみや、、、

知っているような、知らないような、、、

わたしの身体は躊躇なく、人差し指でインターホンを押していた。

少し待つとドアが開き、中から出てきたのは、驚いた様子の毎日お見舞いに来てくれていたあの男性だった。

「エレナ、、、!」
「こ、こんばんは。なぜか身体が勝手にここに向かって、、、来てしまいました。」

わたしがそう言うと、その男性は優しく微笑み、「どうぞ。」とわたしを家の中に入れてくれた。

廊下を歩きリビングに入ると、まず濃いグレーの大きなソファーが目に入った。

わぁ、、、高そうなソファー。

「どうぞ、座って?」
「はい、じゃあ、失礼します。」

わたしはそう言い、フワフワのカバーが掛けられているソファーに腰を下ろした。

すると、座るのが何だか初めてじゃない気がした。

「、、、猫バスみたい。」

わたしがそう言うと、男性は小さく笑い、目頭を押さえて涙を流していた。