今夜の月は眠らない。


瑛太は、裸のまま疲れて眠りに落ちていた。

わたしはもう一度シャワーを浴びると、この家を出ていく準備をした。

瑛太に気付かれないようにそっと玄関に向かい、そっとドアを開け、外で出ると、そっとドアを閉める。

瑛太の家をあとにすると、自分でも不思議だが、わたしはどこか目的を持って走っていた。

バッグを肩にかけ、走って走って走り続けた。

そして、辿り着いたのは背の高い立派なマンションの前だった。

わたしは息を切らしながら、そのマンションを見上げた。

ここの10階に行きたい。
なぜかそう思った。

出入口からエントランスに入ると、わたしはバッグの内ポケットに手を入れ、ある物を探した。
そして取り出したのは、鍵だ。

この鍵で入れる気がする。

わたしは、鍵を差し込める場所に鍵を差し込み、クルッと回した。

すると、エントランスの自動ドアが開いた。

開いた、、、

わたしは自動ドアを潜ると、右側にあるエレベーターのボタンを押す。

1階で止まっていたエレベーターは、ゆっくりと扉を開き、わたしは中へ乗り込んだ。

初めて来るはずのマンションなのに、わたしはなぜか10階のボタンを押していた。