今夜の月は眠らない。


そのあと、わたしが目を覚ましたので、担当医が呼ばれた。

外傷はそれほど酷くはないようだが、過労の為、1週間は入院することになった。

それから、わたしは頭を打ったことにより、一部の新しい記憶を失っているようだった。

「一時的なもので徐々に記憶は戻ってくると思いますよ。」

担当医にそのように言われたが、わたし自身は全く自覚がなかった。

「1週間も休んじゃったら、成美に迷惑かけちゃうなぁ、、、。」

わたしがそう言うと、わたしに付き添ってくれていた男性が「成美さん?もしかして、もう1人の事務員さんのことかな?」と言った。

「はい。事務員は、成美とわたしの2人しか居ないので。」
「、、、成美さんは退職していますよ。」
「えっ?退職?成美が?」
「詳しくは知りませんが、そのように聞いています。」

成美が退職?何で?

そう思ったが、何だか知っていたような気がしないでもなかった。

すると、病室のドアが開き「エレナ!」と聞き覚えのある声がわたしを呼んだ。

ふと見ると、そこには瑛太が立っていた。

「瑛太。」
「エレナが倒れたって聞いて飛んできたんだよ!」

瑛太はそう言うと、わたしに付き添ってくれていた男性に「そこどけよ。」と言い、わたしの側にやって来た。

「わたし、新しい記憶が無くなってるみたいなの。」
「そんなの無くて大丈夫だよ!俺のことは覚えてるだろ?」
「う、うん、、、。」
「それだけで充分だ!退院はいつ?明日?明後日?」
「1週間は入院だって。」

わたしがそう言うと、瑛太はちょっと不機嫌そうに「そんなに入院するのかよ。」と言った。