今夜の月は眠らない。


「今日はどうする?うちに来るかい?」

エレベーターを待っている時に和総さんが言った。

「今日は自分の部屋に帰ります。毎回お邪魔するのは、申し訳ないんで。」
「そんなこと気にしなくていいんだよ?」
「眠れなくなったら、また猫バス借りに行きますから。」

わたしはそう言うと、笑って見せた。

和総さんは少し寂しげに微笑むと、「わかったよ。いつでもおいで。」と言ってくれた。

そして、エレベーターに乗ったわたしたちは、8階で「おやすみ」と言い合った。

自宅の802号室に帰るわたし。

わたしは電気も点けず、ソファーに腰を下ろすと一つ溜め息をついた。

本当は和総さんと一緒に居たい。
でも、和総さんに甘えてばかりもいられない。

さっきの"僕の大事な人"って、どういう意味で言ったんだろ。

わたしを助ける為にその場しのぎで出た言葉?
それとも友人として、大事だと思ってくれてるの?
それとも、、、

わたしは疲れから、段々と眠くなってきた。
シャワーだけでも浴びないと。

いつも自宅に帰ったときは、食欲もなくただシャワーを浴びて布団に入るだけ。

しかし、やはり身体は疲れているはずなのに眠れなかった。
眠たいはずなのに、何で寝れないんだろう。

この日も目を閉じては見たが全く眠れず、一睡もしないまま朝を迎えたのだった。