今夜の月は眠らない。


すると、何やら申し訳なさそうに野田部長が近付いてきて「水瀬さん。」とわたしを呼ぶ。

わたしは無表情のまま「何ですか?」と返事をした。

「あのぉ〜、実はだね、急遽西野さんが退職することになってしまったんだよ。」
「はい、鈴木さんから聞きました。」
「それでだね、西野さんが担当していた業務をやる人が居なくなってしまって、、、水瀬さんにお願いしたいんだが、、、。」

野田部長の言葉に、わたしは「はっ?!」とつい本音の声が出てしまった。

「引き継ぎも何もなくですか?!それに、西野さんが担当してた仕事を全部わたしがやるだなんて無理です!課長にやってもらえばいいんじゃないですか?」

わたしは課長の方を見ると、嫌味を込めてそう言った。

「僕たちには僕たちの業務があるんだよ。」
「それは、わたしも同じです。」
「まぁまぁ、そんな事言わずに頼むよ!頼めるのは、水瀬さんしか居ないんだ。じゃあ、そうゆうことだから、よろしく!」

そう言うと、野田部長は逃げるように自分のデスクに戻って行った。

「ちょっと、部長!、、、はぁ。」

もう溜め息しか出ない。

1人で2人分の業務をやれって?
ふざけんな。

でも、社員が3人、契約社員が2人のところ、成美が居なくなってしまって契約社員がわたし1人になってしまい、あとはパートの鈴木さんだけの小さな支店だ。

鈴木さんは正直、雑務しか任されていないようなものだから、成美が今までこなしてきた業務を引き継ぐのはわたしになるのが自然だった。

それにしたって、成美が担当していた業務をわたしに丸投げだなんて、、、
さすがブラック企業だなぁっと、ある意味関心してしまったのだった。