忍び足で洗面所に近付く。
したたる水の音を確認すると、再びリビングに戻り、スーツの内ポケットを探った。
メールの画面をスクロールする。
前回チェック済みのところまで戻ると、早速確認作業開始だ。
この頃、やりとりが多くなった『麻生淳子』という相手がいる。
メールの中身から推測すると、どうも既婚者らしい。
しかも早人より年上で、子供もいる様子だ。
早人は若手ながら会社では信頼が厚く、いろいろな人から慕われている。
この麻生という女も、そのうちの一人なのだろう。
だが、文面や使う絵文字から、早人に異性として気があることは容易に想像できる。
それは浮気とまでは行かない、気軽にちょっかいを出す程度のものだが、泉美にとっては許せない文面ばかりだった。


