「お姉様、どこにいるのー?」

 ハリのある元気な声。竹を()ったような性格と、誰もが魅了(みりょう)される美貌(びぼう)の持ち主。
 この物語の主役。……シンデレラ。

 王子様と結婚する夢想(むそう)に落ちかけていた私は、その夢が終わりを告げたのを感じた。

 その時何よりがっかりしたのは、シンデレラを裏切(うらぎ)ろうとしていたことを、申し訳なく感じる以上に、これから起こるだろうこと
 ――王子様は一瞬(いっしゅん)で私を忘れ、シンデレラに夢中(むちゅう)になるだろう―― 
 への絶望(ぜつぼう)を強く感じた自分にだ。