シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~

「あの日、ころんでしまった君を、こうして起こしてあげたかった。馬車(ばしゃ)を飛びおりてでも、起こしてあげればよかったと、何度(なんど)何度(なんど)後悔(こうかい)したんだ」

 王子様のやわらかい声が、耳をくすぐる。その声にはげまされて、顔を上げた。

 その私の顔をじっと見つめた後、ふわりと微笑んで言う。
 
「……よかった。傷は残っていないみたいだね」

 王子様の吐息(といき)を、かすかに感じた。それほどに、近い。

「今日は、君を()きおこすことができて、よかった」