「飛行機で亡くなった方って…?」
「…乃木明日香。
俺たちの一つ下の後輩だ」
「女医さん、ですか」
「あぁ。牧が医師団に行くと知って、
両親の反対を押し切って
牧についていった」
「そう、だったんですか」
"両親の反対を押し切って"
というワードが、
医療ミスで牧を訴えたという記事が
事実であることを物語っている気がした。
「2人は紛争地域の最前線にいた。
戦争に巻き込まれて死ぬ医者は
少なくない。
でもまさか、あんな亡くなり方をするなんて
誰も想像していなかった」
京子は小さく頷いた。
無事に役目を果たして帰国する2人が
容易に想像できる。
無論、明日香の顔を知るわけでは
ないのだが…。
雅俊はまた一口卵を食べてから
箸を置いて言った。
「だからあいつは、自分を責めている」
「…」
自分が連れていかなければ
機内で明日香が亡くなることはなかった。
そう考えるのも納得できる。
たとえ自分を責めるのは間違いだと、
他の人間に言われたとしてもだ。



