1番に駆け付けると、
既に麻酔科医やMEたちが大集合していた。

麻酔科医は挿管・ライン類の準備、
MEは増山を筆頭に人工心肺の準備をしていた。

スタッフたちが慌ただしく動き回り、
一番広い手術室も狭く感じるほどだった。

京子の代わりに器械を開いていたのは
まだ新人の「みっちゃん」こと
廣瀬(ひろせ)みのりだった。


「千秋さん、すみません!
 私、ヘルツの器械わからなくて
 とりあえず出すもの適当に出しました」


たしかに、台の上は物で溢れかえっている。

手を洗って整理整頓しないと
今にも雪崩を起こしてしまいそうだった。


「いいよ、ありがと!
 後はなんとかするから大丈夫よ」

「あと何か出すものありますか?」

「うーん」


正直何が出ているかわからなかった。


「もう上がってくるよー!」


先輩看護師の声で、士気が高まる。

慌てる者は焦り、
落ち着いている者は余裕の構えだ。

医者も看護師もその点は同様だった。

京子は周囲の空気に飲まれて
焦っているみのりを落ち着かせるように言った。


「こっちは大丈夫だから、
 外回りの介助してあげてくれる?」

「わかりました!」

「ありがとね」


棚の中から必要そうな針糸を選別し、
それらを台の上にとりあえず出してから
京子は急いで手洗い場に向かった。