『いいのか?』
干場の言葉が頭をよぎる。
京子は我慢できずに口を開いた。
「先生」
「ん?」
「先生のことを週刊誌に売ったのは、
心外の医局秘書さんなんですよ」
「…!」
牧も、窓に寄りかかっていた男も
同時に開いた目を京子に向けた。
京子は牧を見上げて言った。
「全部、心外の教授が仕組んだことなんです。
あのオペをドタキャンしたのも、
心外の先生がお金を受け取る代わりに
敢えて行かなかったんです」
「どうして、きょんちゃんがそのことを?」
「干場さんが、高田先生を問い詰めたそうです。
先生たちにお金を渡したのも、
恐らく秘書さんです。
教授は自分ではそんなことしないだろうから…」
「そっか。さすがだね、ミスターシアトル」
それからしばらく沈黙が続いた。
遠くで工事をしている音が、
はっきりと聞こえるほどに。



