君は大人の玩具という。




翌日。
浅野の予想通り、教授会では
まず第一に牧の記事が議題に上がった。

正確には、議題に上がったという噂が
たちまち院内中に広がっていた。

ある意味、今回の一件の
当事者である心臓外科教授は、
消化器外科の教授に騒動の責任を追及。

2人の教授の仲の悪さに、
教授会は過去稀に見る
険悪なムードだったという。

そして、消化器外科にとっては
苦渋の決断であろうが、
牧には一時的な停職命令が出たと、
京子はスタッフステーションで初めて知った。

もちろん、京子をはじめ
総合外科部門の看護師や
他のスタッフたちは怒りを露わにした。

だが、浅野や荻原たちがそのことには触れずに
黙々と手術をさばいていくため、
誰も何も言えなかった。


「大丈夫?」


なぜか京子にそう聞いてくるスタッフは多かった。


「牧先生、どんな感じ?」

「私が知るわけないじゃないですか」


主任に思わず突っ込むと、
そうだよね、と笑っていた。


「もう勝手にセットのイメージがあるよね」

「…やめてください」


そう言う京子の声にも、
いつもの覇気はなかった。


「千秋さん」


電子カルテに記録を書く手を止めて振り返ると、
干場とベテラン看護師の細谷が
受付の入り口で手招きしていた。