そんな…と京子は思わず浅野に向き直った。
「何も悪いことしてないのに。
牧先生は、室田さんの命を
救ったじゃないですか!」
「そうだよ。
でも、ここで彼の過去の話まで
持ち出してきているということは、
彼の成功を気に入らない誰かが
出版社に情報を流したんだろう。
牧くんは昔から腕が立つ分、
目をつけられやすかったから…」
そんなのは、言ってみれば
誰かのただの嫉妬だ。
だが、牧に罪と呼ばれる過去があるのも
事実だと、浅野は認めている。
京子は目の前の雑誌を手に取り、
改めて過去の罪と題した
記事に目を通した。
そこには、牧がかつて
紛争地域で医師団として
活動していた頃のことが書かれていた。



