ほぼ体当たりの勢いでドアを開けると、
浅野と荻原、
それに数人の医局員と秘書が顔を上げた。
「千秋さん?」
浅野が驚くのも無理はない。
だが、京子は浅野たちがやはり見ていた
雑誌に目を向けて近づいた。
「すみません、突然」
荻原が「ほんと突然だな」と言いつつも
京子が来た理由をそれとなく
察したようだった。
京子は、他の医局員が不思議そうに
見てくるのをお構いなしに、
浅野に言った。
「そこに書いてあることって」
「全部事実だよ。
書き方には悪意があるけどね」
浅野が困ったように笑った。
京子はあたりを見まわした。
やはり、牧はいない。
どうせまたキャバクラだろうと思いつつ、
姿が見えないことに不安が募る。
「じゃあ、過去の罪も、ですか」
「まあ、端的に言えばね。
でも、罪であって、罪じゃない」
「それより、こんな内部のことまで
記事になるなんて、情報漏洩もいいとこだ」
荻原が怒りを露わにしつつ
割り込んで言った。
「誰だか知らんが、
ふざけたことしてくれたもんだ。
教授には、どう説明する?」
荻原が浅野を見た。
浅野は、仕方ない、と首を振った。
「恐らく、明日の教授会で
この件は話に出るだろう。
あとで私からもう一度説明しておくよ」
「なんで成功したオペでこんな言われなきゃ
いけないんだって話だな」
「オペのことじゃない。
牧くんを糾弾することが目的なんだよ」
「え…?」
京子の反応に、
浅野は小さなため息をついて言った。
「ここまで大騒ぎにされると、
彼もしばらくオペさせてもらえないだろうね」



