雑誌の記事には、
東都南大学病院の消化器外科が
心臓外科の監督なしに肝動脈再建をしたこと、
未経験の医師が腹大動脈浸潤がんを剥離したこと、
それがいかに危険な行為であるかが書かれていた。
結果として成功したことよりも、
失敗した場合のリスクが大々的に語られ、
外科医や病院そのものへ
マイナスの印象がいくよう
ミスリードされる内容だった。
更に見出しには、
『問題児・M医師の、
知られざる過去の罪』
と大きな文字が。
細かい内容を読む前に
ラーメン屋を飛び出してきた京子は、
見出しの意味に胸騒ぎを覚えていた。
雑誌の記事がフィルムのように
頭の中に貼りついていた。
京子は走り続けて、髪も息も乱れた、
そのままの勢いで消化器外科の
医局に乗り込んだ。



