君は大人の玩具という。




話し声と足音が遠ざかったところで
京子は自分の担当の手術室に向かった。

たしか牧は5番の部屋でダビンチ手術のはずだ。

京子は5番の部屋の前を通らなくていいよう、
敢えてクリーンルームを通って
自分の1番の部屋に向かった。


なにしてるんだろ、私…。


少しでも油断すると、
あの夢がフラッシュバックしていた。

会ってしまうと、牧は必ず絡んでくる。

そうなっても、きっといつものように
牧を追いやれる自信がなかった。

幸い、今日も明日も牧の手術にはついていない。


次までに、本調子に戻さないと。


京子は大きなため息をついてから
整形外科の人工股関節置換術の
準備を始めた。

その様子を、渚が不思議そうに
窓から覗いていたことに、
京子は気づくことはなかった。