本当に夢なのか。
いや、夢なのだろう。
京子は自問自答を繰り返しつつ、
牧が差し出したペットボトルの水を
一気に喉に流し込んだ。
「あがってく?」
という誘いはしっかり断り、
靴を履いたまま玄関に腰かけていた。
牧も同じように隣で体育座りをして、
京子の様子を伺っている。
だがその顔にはちゃんと色付き眼鏡がつけられ、
ちゃんと医師の顔で心配していた。
「…あの、私、何か言ってました?」
「んー?…ふふふ」
「え、え、なに⁉」
牧の不適な笑みに、さっと血の気が引いていく。
「なんですか、早く言ってください」
「えー?どうしよっかなぁ」
「何言ってたんですか?
え、うそでしょ⁉」
動揺を隠せない京子に、
牧は更に楽しそうに笑った。
「一体どんな夢見てたの?きょんちゃん。
そんなに焦るなんて、いやらしいな~」
「い、や、らしいぃー!?」
「教えてあーげないっ」
「なんでですか!
言ってくださいよ」
「デートしてくれるなら、教えてあげる」
「え、なんで?」
「あ、そこは冷静なのね」
ふふふ、と気持ち悪く笑う牧は、
いつも通りの、いけ好かない牧だった。



