…きょんちゃん
そう呼ぶ声が、心地よくさえ聞こえる。
あぁ本当に、どうにかなってしまったらしい。
「…きょんちゃんっ‼」
「ぇ…」
京子はうっすら目を開けた。
プードルのような茶色の塊が、
次第に人の形に変わっていく。
「ハッ‼」
京子は反射的に体を起こした。
目の前には、心配そうに見下ろしてくる
元気そうな牧の姿。
京子は慌てて周りを見渡した。
見覚えのある景色。
少し前に京子が牧を連れてきた、
牧のアパートの玄関だ。
京子は次第に自分の状況を理解した。
「うそ…」
なんつー夢を…‼
「ギャッ」
勢いよく立ち上がると
牧の顎に頭がクリーンヒットした。



