数分後、中の声が聞こえず諦めた看護師たちは
パソコン作業をしていた京子に詰め寄ってきた。
「ねぇ、千秋!
先生たち出てきたら何の話だったか聞いてよ!」
「え、なんでですか!
先輩たちで聞いてくださいよ」
「あんたあの牧に気に入られてんじゃん!
あのオペのメインって牧先生でしょ?」
「いやいや、喋りたくないんですけど」
「こういう時ぐらいあの重い愛情を
有効活用しなさいよ!」
「めちゃくちゃですって」
ねえ?と隣を見ると、
最近髪をまた一段と明るくした
お団子ヘアの渚が言った。
「ま、私も誰がつくかは気になりますね」
「裏切り者~」
と言っている間に、
カンファレンスルームのドアが開いた。
「じゃ、そういうことでよろしくお願いします」
と、ぞろぞろと部屋から出てくる。
最後に牧が出てきたところで、
京子は先輩からの視線に耐えられず
「ゴホンッ」と一つ咳払いをした。
皆にはたったそれだけのことと
思われるかもしれないが、
たったそれだけのことで、
「あ!きょんちゃん!」
と牧が尻尾を振って寄ってくることを、
京子は嫌というほど知っている。



