「消外より俺らについた方が絶対いいよ。
やっぱりね、外科は心臓が一番だから」
「おぉ~」
自分が一番だと思っている外科医が
教授として存在している時点で、
京子は心臓外科の成れの果てを見た気がした。
だが、それを表情に出すわけにはいかない。
とにかく何か引き出すのに必死だった。
「消外も色々ありましたしねぇ」
「あれねぇ。有り得ないって思ったでしょ」
「まぁ、そうですね。正直?」
瀧本は、敢えて苦笑いをして見せた京子が
自分と同じ考えだと悟ったらしい。
そこからは気持ちよさそうに話し出した。
「一回痛い目みないとだめだって、
思ったんだよ。なあ?」
馬場と高田は相槌を打つばかりだった。
「えー、じゃあ敢えて、だったんですか?」
「絶対言うなよ?
マジで洒落にならないから」
「わかってますって」
「藤原もだぞ」
さすがと言うべきか。
雅俊は一切ぶれずにスルーをつき通していた。
京子はひきつる頬を無理やり上げて言った。
「じゃあー、あの記事も、先生がー?」
京子は瀧本のお猪口に日本酒を注ぎつつ
また探るような視線を向けた。



