京子はそろそろ訪れるであろうチャンスに備え、
こっそり鞄の中でスマホの動画をオンにした。
目的はもちろん、録音だ。
京子は目の前に置かれたお猪口を持って
瀧本たちと乾杯した。
そしてそれを一気に煽って見せると、
目の前のおじ共から予想通りの
反応をゲットして言った。
「瀧本先生のオペ、久々で緊張しましたよ~」
少し体をふらつかせてみる。
雅俊の白い目が刺さったが、
今はそんなこと気にしていられない。
"こっちは体を張りに来ているのだ"精神だ。
「たしかに、こんな優秀な子いたっけって思ったよなぁ!
いつもは?よく、なについてるんだよ」
「いつもはー、心臓かー?
消外ですかねぇー?」
「なーるほど?」
京子の探るような目線に、
瀧本も同様の返しだった。
手術室看護師として鍛えた鋼のメンタル、
ここで発揮しなくていつ使うというのだ。
京子は笑みを浮かべつつ
瀧本の目線の奥の奥まで見つめてみせた。



