「向こうの両親はあたしに一人でなんて育てられるはずない、だったらうちで引き取って会社の跡取りにするって。そうしたら佐和ちゃんがうちで、みんなで皓を育てますって言ってくれた。」

そうだったんだ…

佐和さん、本当に那奈さんのこと心配してた、仲のいい姉妹だったって誠司さん言ってたもんね。

「向こうの両親はそれでやっと納得してくれたの。だけど佐和ちゃんたちには家族もいる。これからのこと全部援助してもらうわけにはいかないから、働こうって思った。皓はあたしと二人で苦しく暮らすよりも佐和ちゃんや暁、朔と暮らす方がいいって思ったの。」

皓さんは相変わらず黙ったまんま。

「…皓、ごめ…」

「もう謝んなくていいから。」

皓さんがやっと口を開いた。

その言い方には棘はなくて、小さな子供を諭すみたいに優しい口調だった。

「正直言ったら、許すとか許さないとかよくわかんないし、あんたが俺の前からいなくなったのは事実だ。」