あたしがそう言うと優兄は困ったみたいな顔をして笑った。

「前にもこんなこと、あったね。」

そうだ、あれは確か初めてバスケ部の集まりに参加した時。

絶対許してくれないりっちゃんに秘密にしててくれて行かせてくれたのは優兄。

あの頃からいつも優しい優兄。

「大事なことなんでしょ?でも気をつけてね、寒いし暗いから。何かあったら連絡してね。」

優兄は優しくあたしの頭を撫でるとマフラーを巻いてくれた。

本当に優しい。

心のオアシス、ううん、もう天使だよ…!

「優ーー!ついでにミカン取ってきて!」

「あ、俺も!てか真兄、初詣行こう!」

リビングから二人の声が聞こえる。

「ほら、行ってらっしゃい。気をつけてね!」

あたしは頷くと玄関を飛び出した。

寒い空気の中をひたすらに走る。

早く、早く会いたい。

勝手なことはわかってる。

だけど今はそれしか頭にないくらい、浅丘君に会いたくて。