せっかく浅丘君があたしを頼ってきてくれたのに!

「愛、あった?」

「ごめんね、それが今日玲に貸してて…」

「私のでよければお貸ししましょうか?」

えっ?

振り返ると後ろに立っているのはミカリン、その手には電子辞書。

「えーっと、いいの?」

浅丘君も戸惑いながらあたしをチラリと見る。

「ええ、今日このクラスは英語ないから。」

「…じゃあ、ありがたく借りさせてもらいます!また返しにくるな!ありがと!」

浅丘君がミカリンに向かってその爽やかスマイルを向けた。

ひえええ!

眩しい!

だけどミカリンは顔色一つ変えずに軽く会釈するとスタスタと席に戻っていってしまった。

「ごめんね、あたしが持ってないばかりに…」

「いいって、気にすんなよ!元はと言えば忘れた俺が悪いんだし。」

やっぱりあたし、浅丘君のこういうところ好きだな…

って、教室の真ん中でなに考えてるんだ!