本当は声を大にして言いたいんだよ!

「愛ちゃーん!呼んでるよ!」

タイミングがいいのか悪いのか、教室の入り口から呼ばれた。

「ごめん!ミカリン、ちょっと行ってくるね!」

このままケーキバイキングの話、なしにしてくれないかな、なんて考えるあたしは最低かもしれない。

「なに浮かない顔してるの?」

浮かない顔なんて、してな…

えっ!?

「あ、浅丘君!」

なんで!?

「愛今日電子辞書持ってる?当たるのに予習してたら忘れちゃって…」

しっかり者の浅丘君なのに珍しい。

けどけど!

喜んでお貸しいたしますよ!!

だってこうしてあたしを訪ねてきてくれるなんて、嬉しすぎるもん!

ニヤニヤしそうな顔を抑えつつ、カバンの中を覗き込む。

えーっと、電子辞書、電子辞書…

…そうだ、今日は英語ないから電池切れたから貸せって言われて横暴人間Rさんに奪われてたんだ…

あいつ〜〜…

しかもRさん、浅丘君と今年もクラス一緒だからこの後使うんだろうし…