「皓、今どうしてるのか?まだ東京にいるのか?たまには帰ってきても…」

「なんで?こんなところ、帰ってきたって意味ないじゃん。他人しかいないのに。」

皓さんの言葉は刃みたいに尖ってて。

「俺が今どこにいるのかさえ知らないくせに家族みたいに言わないでよ。」

「皓!お前…」

先生は椅子から立ち上がる。

けどそれを誠司さんが制した。

「悪かった、皓。」

「へえ、認めるんだ。俺を捨てたこと。そうだよね、元々引きとるって言ってたの、沙和さんだったもんね。」

「それは違う、捨てるなんてするわけないだろう…!」

初めて大きな声をあげた誠司さん。

その勢いにさすがの皓さんも少し驚いたみたい。

「ずっと黙ってて欲しいって言われてたんだ、実は15年前、皓が中学に上がる前、那奈さんが家に来た。」

皓さんは那奈さん、と言う言葉に顔を上げる。

皓さんを置いて出て行った那奈さんが帰って来てたの?