どのくらい眠ってしまったのだろうか。

俺は,少し肌寒さを感じて,目が覚めた。
昼間は汗が噴出すほどの暑さだったのに…
と思いつつ,
薄手のコートを羽織ると,部屋を出た。

もうとっくに陽が馬毛島の向こう側に消えて,
街にも夜の帳が落ちる頃,
俺は一人,豊山を上っていた。





あの夏休みの3日間終わった後も,
俺と七海の関係は別段何も変わらなかった。
お互いを意識することもなく,
そのまま同じ学校に通っている同級生であり,
学校ですれ違っても挨拶をすることもなかった。


ただ俺の中に,
「門倉 七海」
という名前が刻まれただけだった。



学校では二学期に入って
すぐに体育祭が行われた。
勉強は苦手な俺でも,
スポーツだけは別だった。
これこそ,俺の青春!!
唯一,スポットライトが
俺に当たるときだった。


高校の体育祭は学年対抗だ。
毎年,3年生を優勝させないと,
その後の大学入試への影響があるといい,

先生側はあの手この手で
3年生を優勝させようと
画策を謀っていたが,

今年こそは
2年生が優勝をかっさらってやると,
変な対抗心を俺は持っていた。



点数は接戦で,
最後の学年対抗リレーの結果で,
優勝が決まることになり,

グランドの中は応援団を中心に盛り上がり,
選手の緊張感が最高潮に達している

その時だった。