俺の元には,
1週間に数通,絵葉書が届くようになった。

必ず,海の写真の葉書だった。
そして,いつも同じ言葉が添えられていた。


「元気? ごめんね。
 私は元気です。  七海」


中央郵便局の消印だけでは,
俺は七海の居場所を突き止めることはできなかった。



俺は,その葉書だけを支えに毎日走っていた。

そして,時々図書室へ出かけ,
いつも七海が座っていた席の
真向きの席にすわり,
七海の顔を思い出しながら,
眠るのだった。


ここで眼を閉じているわずかな時間に,七海が俺の夢にでてきてくれた。

俺を見て,微笑んでいる七海,
本をよんで涙している七海,
たくさんの七海の顔が浮かんでは消えた。

俺が手を伸ばそうとすると
笑いながら遠く離れていってしまう,
慌てて追いかけようとして俺は眼を覚ます。


そんな俺を司書の先生だけが,
慰めるように「時間だよ。」と声をかけた。




俺の部屋の壁一面が七海の送ってくる葉書で埋め尽くされていった。

そこには,青い海が広がっていた。


海の波間に,七海が一人で小さい船で漂っているような気がした。

すぐにそばに行って,救ってあげたかった。だけど,七海は俺の助けはまっていないのだろう。だから自分の居場所を俺に教えてはくれないのだろう・・・・