週末も部活のある俺は,
朝から汗にまみれて,
グランドを他の仲間と一緒に走り,
身体を温めていた。


「今日は,きっと図書館で本を読んでいるはずだ。」

俺は七海のことを思いつつ,走っていた。


「上妻。こっちに来い。」

顧問の谷口が,俺を呼んだ。
俺は列の先頭から抜けると,
先生のほうへ駆けていった。

「おまえ,九州選抜に選ばれたぞ。」

「は?」

「だから,鹿児島からお前が長距離の選抜に選ばれたんだ。冬は,宮崎で合宿だ。」

俺はしばらくしてから,
ようやく事態を理解して,

「よぉっし!!」

と小さくガッツポーズをして,
まだグランドを入っている仲間と
合流した。

走っていると,
顔をにやけてきてしまうのを,
どうにか引き締めようと
努力したが,全く無理で,

「直樹,お前,何ニヤニヤしてやがる。」

と,周りに突っ込まれて,
ようやく本当のことを話すと,
あっという間に囲まれて,
もみくちゃくしゃにされた。

「おい,お前ら。あと5週追加だ。」

遠くから,谷口の怒鳴り声が響いた。

「やべぇ。」

と団子状になったいた俺たちは,
急いで列をつくると
だいぶ日が落ちるのが早くなり,
茜色に染まるグランドを
走りはじめた。