イレースが人数分、お茶と菓子を持ってきてくれたので(勿論シルナの分はない)。

俺達はめそめそするシルナを無視して、三人でソファに座った。

さて。

まぁ、世間話でもしようか。

「シュニィ。アイナは元気?」

アイナとは、言わずと知れたルシェリート夫妻の愛娘である。

最近会ってない。また大きくなってるだろうなぁ。

「えぇ、それはもう」

そりゃ何より。

…で。

「アトラスの方は?元気?」

「…えぇ。それはもう…」

「…だよな」

むしろ、あいつが元気じゃなかったときを探す方が難しい。

いや、一回あったか。

あれは確か、アイナがまだ一歳かそこらだったとき。

シュニィが遠方に出張中に、アイナが夜中に熱を出したのだ。

昼間は元気に遊んでいたのに、夜中に突然。

アイナの世話係であるエレンは、「昼間元気に遊び過ぎたから、疲れちゃったんでしょうね」と、熱冷ましの薬湯を飲ませ、暖かくさせて寝かせたのだが。

アトラスの方は、それは大騒ぎをした。

昼間あんなに元気に遊んでたのに、夜になっていきなり熱を出すなんて、もしかしたらとんでもなく悪い病気なのではないか、と。

真夜中だったのに、アトラスは全力ダッシュでイーニシュフェルトに…って言うか、シルナのところに走ってきて。

「アイナが熱を出して云々」と、血相変えて捲し立ててきた。

「大丈夫だから。ただの風邪だから。小さい子はよく風邪を引くものだよ。そうやって免疫をつけて、身体が丈夫になっていくんだよ」とシルナに言われ、ちょっと一安心したのだが。

ここでシルナが、余計なことを言いやがった。

「…まぁでも、小さい子の風邪は侮っちゃいけないんだよね。下手をしたら、後遺症が残っちゃうかもしれないから」と。

やっと落ち着きかけていたアトラス、この言葉で再び大爆発。

この世の終わりか、みたいな顔でわなわなと震え。

俺達の制止も聞かず、「アイナに後遺症がぁぁぁ!」とか叫びながら、自宅に帰っていった。

その後。

アトラスは帰り着くなり、アイナを抱き抱え、片っ端から王都の小児科病院を梯子した。

深夜だというのに、である。