お前どんだけ寂しいんだよ。

ってか生徒の方は、そろそろお前のこと忘れてると思うぞ。

毎日毎日めそめそして、なんかもう面倒臭いので。

とりあえず無視していよう。

イレースなんか、つい三日ほど前まで、「いい加減元気を出しなさい」なんて言ってたが。

ここ数日は、もう諦めたのか、何も言わない。

放置である。

彼女は賢いよなぁ。

出来れば俺も、完全スルーしておきたいのだが…。

すると、そこに。

「お邪魔します。シルナ学院長」

聖魔騎士団魔導部隊隊長にして、聖魔騎士団副団長。

シュニィ・ルシェリートその人が、学院長室を訪ねてきた。

「あ、シュニィ」

「こんにちは、羽久(はつね)さん」

「何か用?」

「えぇ。学院長に見てもらいたいものが…」

書類の束を持って、部屋に入ってきたシュニィだが。

「うぅ…。ひっく、さびしいよぅ…」

「…」

「…」

「…無理そうですね」

「…済まん」

って、俺が悪いんじゃないんだけどな。

こいつが勝手に落ち込みまくってるだけで。

毎年やってるからな、これ。いい加減慣れろよ。

「俺で代われるならやるけど」

学院長がてんで役に立たないので、俺が代理を務められることなら、やるが。

しかし。

「済みません。今度のこれは、シルナ学院長でなくては…」

「あー…」

俺では代われない奴ね。はいはい。

さて、どうしたものか。

「急ぎ?急ぎなら、今すぐぶん殴ってふん縛って、無理矢理叩き起こすけど」

何ならイレースも連れてきて、二人がかりで。

しかし。

「いえ、大丈夫です。四月になったら…また来ます」

四月になれば、新しい生徒達が入ってくる。

すると途端、頭お花畑になるからな、この人。

まぁ、大事な仕事だったら、グロッキーな今のシルナを叩き起こすより、四月になるのを待った方が良さそうだな。

すると。

「入りますよ、学院長…あら」

「こんにちは。お邪魔してます」

イレースが、学院長室に入ってきた。

「お客様がいらしてたんですね。そうとも知らず、お構いもせず申し訳ありません」

「あ、いえ私は」

「済みませんね、こんな情けない学院長で…。せめて、お茶でも淹れましょう」

「そんな、お構いなく」

「良いんですよ。今なら、学院長秘蔵のお菓子とお茶を食べ放題飲み放題ですし。お時間が許すなら、是非ゆっくりしていってください」

今のシルナは、自分の秘蔵の菓子を勝手に摘ままれても、さっぱり気づかないだろうからな。

イレースの言う通り、今なら食べ放題飲み放題だ。

「あ、あはは…。では、お言葉に甘えて…」

忙しいところ、折角来てくれたんだからさ。

シルナのお気に入り菓子くらいは、食べてってもらわないとな。