…そんなこんなで。

シルナオオカマキリの、長い一日が終わった。

「どうもー、お邪魔します」

「あ、令月君…」

放課後になると、令月が光の速さで学院長室にやって来た。

特別補習の為である。

「えーと…。今日は何しよっか…。えー…。二年生二学期の範囲でも…」

シルナは、ごそごそと補習の準備を始めた。

いつもならすぐ始められるよう、用意しておくのだが。

如何せん今日は、カマキリやってたからな。

もう今日は、令月でお腹いっぱい。

すると。

「ねぇ羽久さん」

「ん?」

「僕今日、ずっとカマキリに見られてたけど」

…。

「上手く出来てる?僕」

…カマキリに見られてたこと、知ってたのか。

…まぁ、気づかない訳がないよな。

令月の観察眼で。

多分、道中遭遇したイレースとナジュにも、バレてたんじゃないかな。

バレてた上で投げられたり、生き埋めにされたのかもしれない。

投げるのはまだしも、生き埋めは残酷過ぎるだろ。

「僕、上手く出来るように頑張ってるつもりなんだけど、上手く出来てた?」

「…あぁ。お前は頑張ってたよ」

ぐしゃぐしゃと、髪をかき回すように撫でてやった。

頑張り方が、ちょっと人と違うってだけで。

ちゃんと出来てるから。大丈夫。

「…でも鉛筆は使えよ」

毎日墨磨るって、お前。

「え?いや、書き心地が悪くて…」

「…あ、そう…」

まぁ、無理強いはしないけどさ。