神殺しのクロノスタシス2

「…新聞部…?」

令月も、少しびっくりしたらしく。

懐から、小刀を出そうとしていた。

何を持ち歩いてんだ、お前は。

「はい!私達イーニシュフェルト魔導学院、新聞部です!私は部長のベルカ!」

「副部長のアスミ!」

「書記のフウカ!」

元気一杯、学院のスクープは絶対に逃さない。

イーニシュフェルト魔導学院が誇る、新聞部三人組である。

どうやら敵意はないと察したらしく、令月は小刀をしまった。

一生しまっときなさい。

今度小刀を出そうとしたら、没収だな。

「あなたが、今話題の編入生ですね?」

「黒月令月さんという!」

「謎多き二年生!」

「はぁ…。いかにも黒月令月だけど」

謎は確かに多いな。

「突然ですが、取材させてもらっても宜しいでしょうか!」

「取材…?僕で良ければ何でも…。しかし、僕に取材して面白いこと、何かある?」

めちゃくちゃあると思うぞ。

「取材許可ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「どういたしまして」

いちいち復唱するのは、新聞部の特権だな。

「ではまず第一の質問!黒月さんの出身地は?」

「イーニシュフェルトに来るまではどの学校に?」

「ご家族は何処に?ご兄弟は?」

色々やべぇ質問が飛んできてる。

令月は性格が素直だから、素直に答えかねん。

冷や汗を流す俺達。

まさかあいつ、馬鹿正直に答え、

「出身地は地球。以前の学校は青空教室、地球の人々は皆僕の家族であり、兄弟です」

良いぞ。

大変良い返答だ。

「ほう!ユニークな返答ですね!」

「新聞部としては、もっと詳しく聞きたいところですが」

「でも、敢えてその返答を採用させて頂きます!」

よし、新聞部も良い感じに天然だぞ。

「では次の質問!ご自分の性格はどんな感じだと思ってますか?」

「特技は何ですか?」

「趣味は?」

これまた答えにくい質問である。

「性格は良い方じゃないと思う。特技はない。一つを特技にしちゃったら、他のことは不得意になっちゃうから。趣味は人間観察」

ギリギリを責めていく感じの令月。悪くない。

自分の性格を、「良い方じゃない」と表現するのはアリだな。

「悪い」と答えるのはちょっと憚られるもんな。

そして、特技の答え方が格好良い。

「成程成程!」

「趣味が人間観察は良いですね!」

良いか?

「例えば誰を観察してますか?」

「最近は学院長かな」

「嘘っ!?私観察されてる!?」

シルナはガバッと立ち上がり、周囲を見渡した。

大丈夫。観察してるの、むしろこっちだから。

「ほう!黒月さんから見て学院長先生は、どんな風に見えてますか?」

「…そうだな…節足動物かな」

なぁ。

もしかして俺達、監視してるのバレてんじゃね?

急激に冷や汗出てきたんだけど。

「他の先生は?例えば、イレース先生はどんな印象ですか?」

「手強そうかな」

「羽久先生は?」

「多分勝てない」

「ナジュ先生は?」

「隙を突けばワンチャン」

倒すことを前提に、教師陣を観察するのやめてもらえないかな。

「好きな食べ物は何ですか?」

「白米」

「逆に、嫌いな食べ物は?」

「ミミズ。ジャリジャリしてて食べにくい」

むしろ、何で食べてるの?

「ズバリ、好きなタイプは?」

「タイプ?」

「こんな人が好き!って人は?」

「自分を殺そうとしない人かな」

幅広い。

物凄く幅広い。

それ、好きな人じゃなくて普通の人。

「恋人に求める条件とかあります?」

「人間であること」

それ、条件じゃなくて普通の人。

「憧れてる人はいますか?」

「普通の人間」

それ、もう完全に普通のry(。

肝心なことは何も言ってないので、その点は安心だが。

別のところが心配になってきた。