神殺しのクロノスタシス2

「あっ!ナジュ君!私シルナ!シルナだから大丈夫!」

何が大丈夫なんだよ。

何度も言うが、お前がここで何を言おうが、向こうには全く通じてないからな。

ただのカマキリだから。

「成程、カマキリと正面衝突…。気の毒に」

泣いている少女の心を読み、事態をいち早く呑み込んだナジュは。

「全く、なんて酷いことをするカマキリですかね…」

シルナオオカマキリの胴を、指で掴み。

イレースみたいに投げ捨てるのかな、と思ったら。

何を思ったのか、

「…えい」

シルナオオカマキリの目に、デコピンかましやがった。

「あ痛いっ!!」

いやシルナ、お前は痛くないだろ。

痛覚共有してないんだから。

しかし、ナジュ、お前なんて酷いことを。

カマキリだって生きてるんだぞ。

「大丈夫ですよ。こんな下衆カマキリ、僕が退治してやりますから」

マーガレットに向かって、優しく笑いかけるナジュ。

退治も何も、お前今目潰ししたじゃん。

鬼か悪魔の所業。

しかも。

「よ…っと」

ナジュは、窓を開けて、ひょいっと外に出て。

適当な大きさの石を拾う。

まさかその石で殴り付けるのか、と思ったが、それは違うようで。

ナジュはその石で、地面に穴を掘り始めた。

お、お前まさか。

穴がある程度の大きさになると、ナジュは。

「来世は…善行を積んで、生まれ変わるんですよ」

優しくそう言って、シルナオオカマキリを穴の中に放り込み。

足で土をかけ、何度か踏みつけて、しっかり地面を踏み固めた。

「な…な…なんてことを…」

シルナ、絶句。

…生き埋めにしやがった。あの野郎。

血も涙もない。

「はい、退治しましたからね。もう大丈夫ですよ」

廊下に戻ったナジュは、座り込んで泣くマーガレットに手を差し伸べた。

その胡散臭い、優しい笑顔よ。

「あ…ありがとうございます…」

「いえいえ。怖い思いをしましたね、でも大丈夫ですよ。さぁ、一緒に食堂に行きましょうか。泣くようなことじゃありませんからね」

ナジュはマイハンカチを取り出して、マーガレットの手に握らせた。

あ、あいつ…。

「…」

マーガレット含め、様子を見ていた生徒一同は。

女子生徒は、ナジュを思慕の眼差しで見つめ。

男子生徒は、ナジュを羨望の眼差しで見つめた。

こんな下らないことで、あいつ…自分の点数稼ぎしてやがる。

さすが、イーニシュフェルト教師陣人気一位の座を、半年足らずでシルナからかっさらっていっただけのことはある。

やることがジェントルマン。

しかし残酷。

「シルナオオカマキリがぁぁぁぁ」

「…儚い命だったな…」

二代目、死す。

もう、形態をカマキリにするのやめたら?