神殺しのクロノスタシス2

ぶん投げられたものは、仕方ないので。

シルナオオカマキリ二匹目、爆誕。

「よし、今度こそ大丈夫だ」

「…」

何でそこまでカマキリに執着するのか。

なんかもう、どうでも良くなってきた。

急いで令月を追い、教室に辿り着くと。

令月は既に、自分の席に座って、テキストを広げていた。

おっ、感心感心。

予習か?

「さて…」

令月は、学生鞄の中をごそごそ漁っていた。

筆記用具とノートを出そうとしているらしい。

そして、出てきたのは。

半紙。

墨。

筆巻き。

文鎮。

水差し。

布で出来た、黒い下敷き。

「…!?」

ちょっと待て。

俺達、あんなの支給してない。

鉛筆と消しゴムとノート渡したはずなんだけど?

何処から調達したんだあれ?

俺達の驚愕をよそに、令月は硯に水差しで水を入れ、スリスリと墨を磨り始めた。

嘘だろ。

「あ、おはよう令月君」

「令月君おはよう」

登校してきた生徒達が、令月に挨拶。

「おはよう」

令月は墨を磨る手を止めず、挨拶を返した。

おい同級生。その墨磨り野郎を止めてくれよ。

しかし、同級生はもう見慣れているらしく。

「凄いなー墨。毎日よく磨るよ」

「市販の墨汁は?使わないの?」

「いや、市販の墨汁はどうも手に馴染まなくて…」

普通に会話してる。

初日はドン引きだったろうが、イーニシュフェルトの生徒は良くも悪くも素直なので。

一度令月のやり方に見慣れてしまうと、特に突っ込んだりはしないらしい。

いやそれ鉛筆でええやん!って言って良いんだぞ。

「よし、そろそろ良い濃度だ」

墨の磨り方も熟練の腕前。

あいつの草書体が、めちゃくちゃ上手い理由が、何となく分かった。

しかし、イーニシュフェルト魔導学院の歴史も長いが。

まさか、半紙に筆でノートを取る生徒は、俺達も初めてだよ。